IBM System/360 使用マニュアル

デジタルとコンピューター

🔹 対象読者:System/360を初めて使用するオペレーター、プログラマー、および管理者
🔹 目的:System/360の基本操作、ジョブ管理、プログラミング方法を解説


📌 System/360 の概要

IBM System/360 は、商業データ処理から科学技術計算まで幅広い用途に対応する汎用コンピュータです。
本システムでは、カードパンチ機・ラインプリンタ・磁気テープ装置・ディスク装置を活用し、バッチ処理を主体とした計算が行われます。

System/360の主な特徴:
プログラム互換性(全モデル共通の命令セット)
多用途対応(事務処理・科学計算・リアルタイム制御)
高性能な入出力管理(チャネル制御方式)
オペレーティングシステム OS/360 の利用


📌 基本操作:System/360 の起動と停止

(1) System/360 の起動手順

1️⃣ 電源投入(コンソールからシステムを制御)

  • メイン電源スイッチを「ON」にする
  • CPU、**周辺機器(ディスク・磁気テープ・プリンタ)**の電源を投入

2️⃣ OS/360 のロード(IPL:初期プログラムロード)

  • ブートストラップ処理(IPL) を実行
  • OSをディスクまたは磁気テープからメモリにロード
  • コンソールに「READY」表示が出たら準備完了

(2) System/360 の停止手順

1️⃣ すべてのジョブを終了させる

  • コンソールでアクティブジョブを確認し、完了するまで待つ
  • P STOP コマンドでプリンタ・磁気テープを安全に停止

2️⃣ OSのシャットダウン

  • HALT コマンドを入力し、OS/360を停止
  • 「SYSTEM HALTED」表示を確認

3️⃣ 電源オフ

  • CPU → 周辺機器の順に電源を切る

📌 入出力装置の操作

(1) パンチカードリーダーの使用

System/360では パンチカード を利用してジョブを投入します。
カードリーダーに JCL(ジョブ制御言語) で書かれたジョブをセットし、「READ」ボタンを押す とジョブが開始されます。

(2) ラインプリンタの使用

ジョブの結果(出力)はラインプリンタに送られます。

  • プリント出力を確認するには、コンソールで出力キューを監視 し、適切な処理を行う。
  • PRINT コマンドで、指定したジョブの出力をプリント可能。

(3) 磁気テープ装置の使用

磁気テープは データのバックアップや大容量データの保存 に使用されます。

  • MOUNT TAPE コマンドで、テープを読み込みモードに設定
  • REWIND コマンドで、テープを巻き戻し

📌 ジョブ管理(JCLの基本)

System/360 では JCL(ジョブ制御言語) を使用して、プログラムを実行します。
以下のようなJCLカードを作成し、パンチカードでシステムに投入します。

(1) JCLの基本構造

//JOB1      JOB  (ACCT),'ユーザー名',CLASS=A,MSGCLASS=A
//STEP1     EXEC PGM=MYPROG
//SYSIN     DD  *
データ入力(カードデータなど)
/*
//SYSPRINT  DD  SYSOUT=A

JOBカード:ジョブ名を指定
EXECカード:実行するプログラムを指定
DDカード:入力・出力ファイルを指定


📌 プログラミング(アセンブリ言語・FORTRAN)

(1) アセンブリ言語(BAL: Basic Assembler Language)

System/360は、BAL(Basic Assembler Language) による低レベルプログラミングが可能です。

📌 簡単なアセンブリプログラム(加算処理)

START   BALR  12,0         * レジスタ12にプログラム開始アドレスをロード
        USING *,12         * レジスタ12をベースレジスタとして使用
        L     1,NUM1       * NUM1 の値をレジスタ1にロード
        L     2,NUM2       * NUM2 の値をレジスタ2にロード
        A     1,2          * レジスタ1と2の値を加算
        ST    1,RESULT     * 結果をメモリへ保存
        END
NUM1    DC    F'5'         * 定数 5
NUM2    DC    F'3'         * 定数 3
RESULT  DS    F           * 結果格納用

(2) FORTRANによるプログラミング

System/360では、FORTRAN IV によるプログラム開発も可能です。
以下は、System/360用のFORTRANプログラム例です。

📌 FORTRAN IVの簡単なプログラム

      PROGRAM SUM
      INTEGER A, B, C
      PRINT *, 'Enter two numbers:'
      READ *, A, B
      C = A + B
      PRINT *, 'Sum is:', C
      END

PRINT * で画面に表示
READ * でユーザー入力


📌 トラブルシューティング(エラーハンドリング)

よくあるエラーと対処法

エラー原因解決策
JOB NOT FOUNDジョブ名の入力ミスJCLを修正して再投入
TAPE NOT READY磁気テープが未装着MOUNT TAPE を実行
PRINTER OUT OF PAPERプリンタ用紙切れ用紙を補充して PRINT RESUME
INVALID INSTRUCTIONアセンブリ命令の誤り命令セットを確認して修正

📌 まとめ

📌 System/360の操作ポイント

  • IPL(初期プログラムロード)でOSを起動
  • パンチカードでJCLジョブを投入
  • 磁気テープ・ディスク装置を活用
  • アセンブリ言語・FORTRANでプログラム作成
  • エラーが発生したらコンソールでログを確認

System/360は、今後もコンピュータの標準的なプラットフォームとして発展することが期待されます。
本マニュアルを参考に、System/360を最大限に活用してください! 🚀

コメント