はじめに
1981年8月12日、IBMは同社初のパーソナルコンピューター「IBM Personal Computer Model 5150(以下、IBM PC)」を発表しました。この出来事は、パーソナルコンピューティングの歴史を大きく変える分岐点となりました。IBM PCのオペレーティングシステムとして採用されたのが「PC DOS 1.0」、すなわち「MS-DOS 1.10」です。
この記事では、MS-DOSの誕生に至るまでの背景、IBM PCの登場、そして当時のオペレーティングシステムの選択肢などを詳しく解説します。
MS-DOSとは何か?
MS-DOS(Microsoft Disk Operating System)は、マイクロソフトが1981年に開発した16ビットのディスクベースのOSです。MS-DOSは、シアトル・コンピュータ・プロダクツ(SCP)の「86-DOS」(当初はQDOSと呼ばれていた)を元にしており、マイクロソフトはこれをライセンスし、後に買収しました 。
マイクロソフトはこのOSをIBMにライセンスし、「PC DOS」として提供しました。IBM製品としてのOSは「PC DOS」、マイクロソフトが他社向けにOEM提供するものが「MS-DOS」として区別されていました。
1981年8月12日:IBM PCの登場
IBMがリリースした「IBM Personal Computer Model 5150」は、Intel 8088プロセッサ(4.77MHz)、16KBのRAM(最大640KB)、カセットテープ/フロッピーディスク対応といった仕様で、市販価格はベースモデルで約1,565ドルからでした 。
IBMはこの新製品のOSとして、以下の3つの選択肢をユーザーに提供しました:
- PC DOS 1.0(MS-DOS 1.10)
- CP/M-86(Digital Research)
- UCSD p-System(Pascalベースの教育向けOS)
ただし、発売当初に利用可能だったのはPC DOS 1.0のみで、CP/M-86とUCSD p-Systemは後日提供されました 。
なぜIBMはマイクロソフトを選んだのか?
当初、IBMはデジタル・リサーチ社の「CP/M-86」をOSとして採用する予定でしたが、ライセンス契約に関して交渉が難航し、急遽マイクロソフトにOSの提供を依頼しました。
マイクロソフトは独自のOSを保有していなかったため、シアトル・コンピュータ・プロダクツから86-DOSを購入し、自社で改良・最適化。これを「MS-DOS 1.10」としてIBMに提供しました 。
MS-DOS 1.10の特徴
- コマンドラインベースの操作体系
- ファイル管理機能(DIR, COPY, DEL など)
- FAT12ファイルシステムの採用
- 最大160KBの5.25インチ片面フロッピーディスク対応
- シングルタスク構造
MS-DOS 1.10は、シンプルな構造でありながら、当時のパーソナルコンピューターに必要な基本的な機能を備えていました。
まとめ:ここからすべてが始まった
MS-DOS 1.10の登場は、マイクロソフトにとっての転換点でした。以後の数十年にわたり、MS-DOSはWindowsへと進化し続け、世界中のPCの基盤として君臨していくことになります。
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