はじめに
2000年。
Microsoftは同じ年に2つの異なるWindowsをリリースしました：
- Windows 2000：NT系OSの本格的な完成形
- Windows Me（Millennium Edition）：MS-DOS系最後のWindows
この回では、なぜMicrosoftはこのような二重戦略を取ったのか、そしてどちらの系統が生き残ったのか――その歴史的背景と技術的特性を詳しく紐解いていきます。
Windows 2000：NTの成熟と真の「次世代OS」
🎯 概要
- 発売日：2000年2月17日
- 系統：Windows NT 5.0
- ターゲット：企業向け（デスクトップ〜サーバー）
💡 特徴
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| NTFS 3.0 | 圧縮・暗号化・アクセス制御機能を大幅強化 |
| Active Directory | ドメイン管理の統合機能を導入（初登場） |
| デバイスの安定性向上 | WDM（Windows Driver Model）ドライバ採用 |
| 完全32ビットカーネル | 9x系と完全決別（MS-DOS非搭載） |
| USB、ACPI対応 | 一般PCへの本格対応を強化 |
| ゲーム互換性も改善 | DirectX 7対応、ただし9xより劣る場面も |
✅ エンタープライズでもデスクトップでも使えるOSがついに登場した
Windows Me（Millennium Edition）：最後のMS-DOS系
🎯 概要
- 発売日：2000年9月14日
- 系統：Windows 9x（Windows 98の延長）
- ターゲット：家庭用ユーザー
💡 特徴
| 機能 | 内容 |
|---|---|
| システムの復元 | 初登場。PCが不安定になったときに元に戻せる |
| Windows Movie Maker | ビデオ編集機能を初搭載 |
| USBサポート強化 | Plug & Playがより安定 |
| MS-DOSモード削除 | 起動時のReal Modeを完全排除（MS-DOSの終了） |
| スキャン高速化などのUI改善 | Windows 2000風のビジュアルへ変更 |
❌ しかし多くのユーザーにとって不安定でバグが多いと評価された
→ 「Windows史上最悪の出来」とさえ言われることも
なぜ2つのWindowsが同時に存在したのか？
背景事情
- NT系（Windows 2000）は安定・安全だが、高スペックを要求
- 家庭ユーザーはまだ低スペックPCを使っていた（64MB未満が多数派）
- 9x系（Windows Me）はMS-DOS互換を前提にした軽量OS
Microsoftの戦略
- 2000年当時は「段階的な移行期間」と考えていた
- 本格統合は次のバージョン（Windows XP）に持ち越された
技術比較表
| 項目 | Windows 2000 | Windows Me |
|---|---|---|
| カーネル系統 | NT | MS-DOS / 9x |
| 安定性 | 非常に高い | 低い（クラッシュ多発） |
| メモリ保護 | 完全あり | 制限あり |
| USB/DirectX 対応 | ○（7.0） | ○（7.1） |
| ゲーム互換性 | △（やや劣る） | ◎（DOSゲームも可） |
| MS-DOS モード | ×（非搭載） | ×（削除された） |
| セキュリティ機能 | 強力（AD, ACL等） | 最小限 |
| ターゲットユーザー | ビジネス、管理者 | 一般家庭 |
MS-DOS、ここに完全終了
Windows Meの登場により、MS-DOSはついに完全に排除されました。
| バージョン | MS-DOSの扱い |
|---|---|
| Windows 95 | 起動に必須（DOS 7.0） |
| Windows 98 | モード選択可能（7.1） |
| Windows Me | 排除（8.0） |
| Windows 2000以降 | 非搭載（NT系） |
💀 Windows Me = MS-DOSの墓碑
まとめ：過渡期の象徴、そして次なる統合へ
- Windows 2000：企業向けとしてNT系の完成形に近づいた
- Windows Me：MS-DOS系の最終版として不完全燃焼で終わった
この「分裂の終焉」は、翌年に登場する1つのOSにより解決します。
それこそが――Windows XP。
参考文献・出典
- Microsoft Windows 2000 Technical Overview
- Microsoft Windows Me Product Guide
- Paul Thurrott’s WinSuperSite Archives
- Ars Technica Windows Retrospective
- The Old New Thing – Raymond Chen
- “Inside Windows 2000” – Microsoft Press
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