はじめに
1995年8月24日、MicrosoftはWindows 95を全世界に向けて発売しました。
それは単なるバージョンアップではなく、パソコンの操作体系そのものを塗り替える歴史的な転換点でした。
Windows 95の登場によって、MS-DOSは表舞台から完全に退き、GUIがOSの「本体」として確立されていきます。
本記事では、Windows 95の革新性、MS-DOSとの関係、そして「MS-DOSの終焉」について詳しく解説します。
MS-DOSとWindowsの関係:ここまでの復習
時代 | OS | 主役は? | 補助的な存在 |
---|---|---|---|
1981〜1989 | MS-DOS(3.x) | DOS | GUIなし |
1990〜1992 | Windows 3.x + DOS | DOS & GUI | MS-DOS(基盤) |
1995〜 | Windows 95 | Windows GUI | MS-DOS(裏方) |
Windows 95とは何か?
🎯 概要
- 発売日:1995年8月24日
- 開発コード名:Chicago
- 販売開始から4日間で100万本以上を出荷(爆発的ヒット)
💡 主な特徴
機能 | 内容 |
---|---|
スタートメニュー | 初登場。すべての操作の起点となる統一UI。 |
タスクバー | 起動中アプリを一目で把握。 |
マルチタスク | 16ビット/32ビットハイブリッドでプリエンプティブ対応(条件付き) |
プラグアンドプレイ (PnP) | 周辺機器の自動認識と設定。 |
長いファイル名(LFN) | 最大255文字、スペース・日本語対応もOK! |
32ビットアプリ対応 | 新しいWin32 APIベースアプリが本格登場。 |
MS-DOSとの関係:完全には切れていない
Windows 95は「MS-DOSをベースとしながらGUI OSとして独立動作するハイブリッドOS」でした。
🔍 内部構造のポイント
- 起動時にまずMS-DOS 7.0が立ち上がり、その上でWindows GUIが動作する構造
- MS-DOSモード(Real Mode)でも起動可能(ゲーム互換などの理由)
CONFIG.SYS
,AUTOEXEC.BAT
も互換動作- しかし、Windows GUI上では コマンドプロンプト(COMMAND.COM)はただのアプリにすぎない
✅ 結論:Windows 95は「MS-DOSの後継ではなく、MS-DOSを土台としたGUI OSの完成形」
なぜ「革命的」だったのか?
1. 初心者でも使える統一UI
- スタートボタン、エクスプローラー、アイコン操作など、視覚的で直感的な設計
- 「初心者もプロも使えるOS」という思想の具現化
2. ネットワークとインターネット
- TCP/IPスタックを標準搭載(Internet Ready)
- ダイヤルアップ設定、共有プリンタ/ファイルのGUI化
- Microsoft Plus! パックでInternet Explorerが導入可能に(当初は別売)
3. ハードウェア自動化と標準化
- USBは未対応だが、PnPによりISAカード等の設定が大幅に簡素化
- IRQやDMA設定地獄からの解放(完全ではない)
MS-DOSの終焉とは?
MS-DOSは、Windows 95においても裏で動作し続けていますが、次第にその役割を失っていきます。
年 | 出来事 |
---|---|
1995 | Windows 95:GUIがメイン、DOSはサブに |
1998 | Windows 98:DOSモード維持されるが非推奨に |
2000 | Windows 2000:NT系移行でMS-DOSベースではなくなる |
2001 | Windows XP:MS-DOS完全消滅(エミュレーション除く) |
💬 開発者の言葉:「Windows 95は、DOSを殺さずに見えなくした」(Raymond Chen, Microsoft)
補足:バージョン表
OS名称 | Windowsカーネル | MS-DOSバージョン | 備考 |
---|---|---|---|
Windows 95 | GUI(Win4.x) | MS-DOS 7.0 | 起動時にDOS7.0を経由 |
Windows 98 | GUI(Win4.1) | MS-DOS 7.1 | DOSモード利用可能 |
Windows Me | GUI(Win4.9) | MS-DOS 8.0 | DOSモード削除、GUI専用化 |
Windows 2000以降 | NT系 | 非搭載 | DOSはエミュレーションのみ(NTVDM) |
まとめ:MS-DOSが役目を終えた日
Windows 95は、技術的にも商業的にも大成功を収めました。
それは同時に、MS-DOSが表舞台から去る瞬間でもありました。
MS-DOSは、時代を作り、時代に葬られたOSだった。
GUIの時代が本格的に始まり、パソコンはコマンド入力からマウス操作へと完全に移行しました。
そしてその変化は、次世代OSであるWindows NT系(2000/XP)へと受け継がれていきます。
参考文献・出典
- Microsoft Windows 95 Resource Kit
- Raymond Chen: The Old New Thing
- PC/Computing Magazine Archives, 1995
- Ars Technica OS Retrospectives
- “Inside Windows 95” – Microsoft Press
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