ネルソン・マンデラ氏、同国初の黒人大統領に就任
1994年5月10日、南アフリカ共和国は歴史的な転換点を迎えた。長年にわたり人種隔離政策(アパルトヘイト)に苦しんできた同国で、ネルソン・マンデラ氏が初の黒人大統領として正式に就任したのである。
就任式は首都プレトリアで行われ、国内外から多数の要人が出席した。これは単なる政権交代ではなく、白人少数支配から全人種参加型民主主義への移行を象徴する出来事として、世界中の注目を集めた。
マンデラ氏は1960年代、反アパルトヘイト運動の中心人物として活動したが、1962年に逮捕され、その後27年もの長きにわたり投獄された。しかし、獄中にあっても復讐ではなく「和解」を訴え続けた姿勢は国際的な評価を受け、1990年に釈放されると、国の分断を乗り越える象徴的存在となった。
同年4月に実施された全人種参加による初の普通選挙では、マンデラ氏率いるアフリカ民族会議(ANC)が第1党となり、民主的手続きを経ての大統領就任が実現した。
就任演説でマンデラ大統領は、「過去の憎しみではなく、希望によって未来を築く」と述べ、白人・黒人を問わずすべての国民の和解と共存を呼びかけた。この言葉は、長く分断されてきた国家の再出発を強く印象づけるものとなった。
南アフリカ共和国のこの平和的な体制移行は、冷戦終結後の国際社会においても稀有な成功例とされ、人種差別撤廃と民主主義の象徴的勝利となった。


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