第3回:生産性機能の裏側を読む

― Snap Layouts・仮想デスクトップ・通知はなぜ“思った通りに動かない”のか

Windows 11の生産性向上機能は、見た目以上に評価が分かれる。
「便利になった」という声がある一方で、「融通が利かなくなった」と感じる技術者も多い。

この違和感の正体は、操作性の問題ではない。
Windows 11では、生産性機能そのものの“設計目標”が変わったからだ。

第3回では、Snap Layouts、仮想デスクトップ、通知/フォーカス機能を例に、
なぜ挙動が制御され、なぜ自由度が下がったように感じるのかを読み解く。


Snap Layoutsは「自動化のための制約」である

Snap Layoutsは、ウィンドウ管理を自動化するための機能だ。
その目的は明確で、

  • 画面サイズや解像度に依存しない
  • マルチディスプレイでも破綻しない
  • タッチ操作でも成立する

という条件を満たすことにある。

その結果、Windows 10まで可能だった
「ピクセル単位での自由な配置」は意図的に切り捨てられている。

技術的な背景

  • レイアウトは事前定義パターンのみ
  • DPI・スケーリングを跨いでも再現性を優先
  • ウィンドウ状態はグループ単位で管理

Snap Layoutsは「職人向け」ではなく、
“再現性のある作業環境”を作るための機構だ。


Snap Groupが引き起こす混乱

Windows 11では、スナップされたウィンドウは Snap Group として扱われる。

これにより、

  • タスクバー上でグループ単位に復元
  • アプリの再起動時に配置が維持される

といった利点がある。

一方で、

  • 意図せず複数アプリが同時に復元される
  • 単体ウィンドウとして扱えない感覚

が生まれやすい。

これはバグではない。
ウィンドウ管理の最小単位が「アプリ」から「作業単位」へ変わった結果である。


仮想デスクトップは「分離」ではなく「文脈管理」

Windows 10の仮想デスクトップは、単純な作業空間の分離だった。
Windows 11では、役割が変わっている。

  • デスクトップごとに壁紙を変更可能
  • アプリ配置の再現性向上
  • タスクバー表示の制御

これは「別PCを持つ」感覚に近づける設計だ。

技術者が感じる違和感

  • アプリが完全には分離されない
  • 通知はデスクトップを跨ぐ
  • プロセスは共有される

仮想デスクトップは、
セキュリティ境界ではなく“思考の切り替え装置である。


なぜ仮想デスクトップは軽いのか

Windows 11の仮想デスクトップは、
Linuxの仮想デスクトップや仮想マシンとは根本的に異なる。

  • カーネル共有
  • メモリ空間共有
  • プロセスは同一セッション

これにより、

  • 切り替えが高速
  • リソース消費が少ない
  • 管理が単純

という利点を得ている。

重い分離を求めるなら、仮想デスクトップではなく仮想マシンを使うべきだ。


通知とフォーカスは「抑制」が主目的

Windows 11の通知設計は、「見逃さない」よりも
「邪魔しない」ことに重点が置かれている。

  • フォーカス(旧 集中モード)の強化
  • アプリごとの通知制御
  • バナー表示の抑制

これにより、
重要な通知が“遅れて”届くことがある。

これは欠陥ではなく、
割り込みを減らすための設計判断だ。


技術者ほど通知に不満を感じやすい理由

技術者は、

  • 並列作業が多い
  • 長時間集中する
  • 通知の優先度を自分で判断したい

という傾向がある。

しかしWindows 11は、
「ユーザーが判断する」より「OSが判断する」方向に寄せている

この思想のズレが、違和感として表面化する。


生産性機能を“制御不能”と感じたら

Snapや仮想デスクトップが合わない場合、
それは使い方が間違っているのではない。

  • Windows 11は“自由度”より“再現性”を選んだ
  • 個人最適より組織最適を優先している

という前提を理解する必要がある。


技術者向けの現実的な使い分け

  • 画面配置に強いこだわり → サードパーティツール併用
  • 作業文脈の切り替え → 仮想デスクトップ
  • 完全分離が必要 → 仮想マシン/別ユーザー

Windows 11の生産性機能は、
万能ではなく、役割特化型だ。


次回予告

第4回:UIカスタマイズとポリシー管理
― 個人の自由と組織統制は、どこで線を引くべきか。

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