第10回:認証とアクセス制御の設計

― パスワードは、もう主役ではない

Windows 11 を使っていて、
「ログインが面倒になった」と感じたことはないだろうか。

PIN、顔認証、指紋、二段階認証、
場合によっては再認証。

これは改悪ではない。
認証の前提条件が変わった結果だ。

第10回では、
Windows 11 における認証とアクセス制御を
“個別機能”ではなく“設計思想”として整理する。


パスワード中心設計はすでに破綻している

Windows 11 の設計思想は明確だ。

パスワードは危険である

  • 使い回される
  • 漏洩する
  • フィッシングに弱い

これを前提に、
パスワードを使わなくても成立する認証モデルが構築されている。


Windows Hello は補助ではない

多くのユーザーは、
Windows Hello を「便利機能」だと思っている。

しかし実態は違う。

Windows Hello は、

  • パスワードの代替
  • デバイス紐づけ認証
  • フィッシング耐性を持つ

第一級の認証手段である。


PIN が安全な理由

「PINは短いから危険」という誤解が多い。

Windows Hello の PIN は、

  • デバイスローカル
  • TPM に保管
  • 外部送信されない

つまり、
漏れても他では使えない

長いパスワードより、
短いPINの方が安全な場面が増えている。


生体認証は「本人確認」ではない

顔認証・指紋認証は、
本人確認のように見えるが、実際は

デバイス所持+生体特徴

という 二要素認証の一部 だ。

  • デバイスがないと意味がない
  • TPM がないと成立しない

Windows 11 は、
端末を信用の起点に置く設計になっている。


アカウントの種類が意味を持つ

Windows 11 では、
どのアカウントでログインするかが極めて重要だ。

  • ローカルアカウント
  • Microsoft アカウント
  • Azure AD / Entra ID

これらは単なるログイン方法ではなく、
管理モデルの違いを表している。


権限設計は「昇格させない」方向へ

UAC は昔からあるが、
Windows 11 ではその意味が変わった。

  • 管理者でも常時昇格しない
  • 明示的操作のみ昇格
  • 生体認証での昇格も可能

これは、
「管理者だから安全」という幻想を壊す設計だ。


条件付きアクセスという考え方

Windows 11 は、
単体で完結するOSではない。

  • どのデバイスか
  • どの場所か
  • どの状態か

によって、
アクセス可否を変える前提になっている。

これは、
ゼロトラストセキュリティの実装そのものだ。


技術者が陥りやすい失敗

  • 旧来のパスワードポリシーを押し付ける
  • Hello を無効化する
  • ローカル管理者を多用する

これらは、
Windows 11 の思想と真逆の運用になる。


個人・開発・企業での設計指針

個人環境

  • Hello を積極的に使う
  • Microsoft アカウント前提で考える

開発環境

  • 管理者権限は最小限
  • 昇格操作を明示的に分離

企業環境

  • Entra ID 連携前提
  • 条件付きアクセスを設計に組み込む

Windows 11 は「誰か」ではなく「何か」を信頼する

Windows 11 の認証は、

あなたは誰か

ではなく、

このデバイスは信頼できるか

を問う。

この発想を理解しないと、
認証はただ煩雑なだけに見える。


次回予告

第11回:ネットワーク接続と通信制御
― Wi-Fi はつながれば良い、では済まされない。

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