第6回:統合と自動化

― OLEは失敗したが、思想は勝った

Windows 95のOLEは、正直に言えば「扱いづらく、不安定で、重い」。
技術者の多くが敬遠したのも事実だ。

それでもOLEは、
Windowsの未来を決定づけた思想実験だった。


1. OLE以前、アプリは孤立していた

Windows 3.1 までのアプリケーションは、基本的に独立していた。

  • データはファイルで受け渡し
  • 連携はコピー&ペースト
  • 自動化はバッチ処理頼み

つまり、

アプリ同士は互いを知らない

世界だった。


2. OLEの本質は「埋め込み」ではない

OLEはしばしば、

  • WordにExcel表を貼る技術
    として語られる。

だが本質はそこではない。

OLEが狙ったもの

  • プロセスを越えたオブジェクト共有
  • アプリ境界の破壊
  • OS主導のアプリ統合

つまり、

OSが“アプリ同士の仲介者”になる

という思想だ。


3. 技術的に何が起きていたのか

OLEは内部的に、

  • COM(Component Object Model)
  • インターフェース指向設計
  • 参照カウント管理

を前提としていた。

これは当時としては極めて先進的だった。

一方で、

  • 学習コストが高い
  • デバッグが困難
  • パフォーマンス問題

という代償も大きかった。


4. 自動化という「未来の伏線」

OLE Automation(後のActiveX)は、

  • 外部からアプリを操作
  • GUI操作をコード化
  • 業務フローを再現

する技術だった。

これは後に、

  • VBA
  • PowerShell
  • RPA

へと姿を変える。

「人がやる操作を機械にやらせる」

という発想は、ここで初めてOSレベルに降りてきた。


5. なぜOLEは失敗と見なされたのか

理由は明確だ。

  • 不安定(参照カウント地獄)
  • セキュリティが弱い
  • バージョン地獄(DLL Hell)

技術的負債は深刻だった。

だが重要なのは、

失敗しても思想は捨てられなかった

という点である。


6. COMは死ななかった

OLEは衰退したが、

  • COM
  • DCOM
  • ActiveX

はWindows内部に深く根を張った。

さらにその思想は、

  • .NET
  • サービス指向設計
  • マイクロサービス

へと受け継がれていく。


7. Windows 95がやった本当のこと

Windows 95は、

  • アプリを孤立させず
  • OSが統合し
  • 自動化の余地を残した

初めてのWindowsだった。

これは安定性よりも、

拡張性と将来性を取った選択

だった。


まとめ:OLEは犠牲になった

OLEは、

  • 批判され
  • 嫌われ
  • 捨てられた

しかしその犠牲の上に、
現代Windowsの自動化文化は存在する。


次回予告

第7回:メッセージングと通信
― ネットワークは“追加機能”から“前提条件”へ

次回は、
TCP/IP標準搭載、Exchange、ダイヤルアップを通じて
Windowsが「孤立OS」から「ノードOS」へ変わった瞬間を解析する。

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