― ネットワークは“追加機能”から“前提条件”へ
Windows 95以前、ネットワークは特別な環境だった。
- 企業内LAN
- 専用サーバ
- 専門知識を持つ管理者
Windows 95は、この前提を壊した。
通信をOSの標準機能に引き下ろしたのである。
1. TCP/IPが「最初から入っている」という衝撃
Windows 3.1時代、
TCP/IPは「別売り」だった。
- 専用スタック
- サードパーティ製
- 高価で複雑
Windows 95は違う。
TCP/IPがOSに最初から含まれている
これは技術的というより、
思想的な革命だった。
2. NetBEUIからIPへの転換
当時のWindowsネットワークは、
- NetBEUI:簡単だが閉じた世界
- IPX/SPX:Novell依存
- TCP/IP:複雑だが世界標準
という三つ巴だった。
Windows 95は、
TCP/IPを“標準の一つ”ではなく“未来の標準”として扱った。
結果、
Windowsはインターネットと不可逆に結びつく。
3. ダイヤルアップネットワークの抽象化
Windows 95のダイヤルアップは、
- モデム制御
- 回線設定
- 認証処理
をOSが一括管理した。
技術者的には、
- 遅い
- 不安定
- 設定項目が多い
それでも重要だったのは、
通信を「特別な操作」から「日常操作」に変えた
点である。
4. メッセージングという未完成領域
Microsoft Exchange(初期版)は、
- メール
- スケジューリング
- 連絡先
を統合しようとした。
だが現実は、
- 重い
- 設定困難
- 普及しない
それでもExchangeは、
通信はアプリではなくOSが扱うべき
という前提を植え付けた。
5. 通信スタックの脆さと代償
Windows 95のネットワークは不安定だった。
- スタックのフリーズ
- VxD暴走
- 再起動必須
だがこの不安定さは、
普及のために支払われた代償
だった。
完全性より、
「つながる体験」を優先した。
6. セキュリティは“考慮外”だった
当時の前提はこれだ。
- 常時接続ではない
- 攻撃者はいない
- LANは信頼できる
結果、
- ファイアウォールなし
- 権限分離なし
- 暗号化は限定的
これは失策だが、
当時としては合理的判断でもあった。
7. Windowsは「孤立OS」を捨てた
Windows 95は、
- ネットワークを内蔵し
- 通信を抽象化し
- ユーザーから隠蔽した
結果、
PCは世界と常につながる存在
になった。
この瞬間から、
Windowsは後戻りできなくなる。
まとめ:不完全でも“つながる”ことが勝った
Windows 95の通信機能は、
- 遅く
- 不安定で
- 危険だった
それでも普及した。
理由は一つ。
「つながる体験」がすべてを上回った
次回予告(最終回)
第8回:リソースの共有とインターネットの使用
― Windows 95は“現代ネット社会”の入口だった
最終回では、
ファイル共有・プリンタ共有・IE統合を通じて
Windows 95が残した決定的な遺産を総括する。

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