最強ハッカー、ついに逮捕

FBI、2年越しの逃走劇に終止符

1995年2月15日、アメリカ連邦捜査局(FBI)は、全米で最も危険なハッカーとされてきたケビン・ミトニック容疑者(32)をロサンゼルス近郊で逮捕したと発表した。
コンピュータ業界関係者の間では長らく「捕まらない存在」と語られてきた人物だけに、その逮捕は大きな衝撃をもって受け止められている。

ミトニック容疑者は、複数の大手コンピュータ企業や研究機関のシステムに不正侵入し、機密データを盗み出したとして起訴されていた。過去に有罪判決を受け保護観察中だったが、逃亡。その後およそ2年間、捜査網を巧みにかいくぐり続けていた。


孤独な少年時代から「Condor」へ

ミトニック容疑者はロサンゼルスのユダヤ系家庭に生まれ、3歳の時に両親が離婚。母親に引き取られ、比較的孤独な少年時代を過ごしたとされる。
学校では目立たない存在だったが、市内の高校でコンピュータに触れる機会を得たことが、その人生を大きく変えた。

ネットワークを通じて知り合った仲間たちから「Condor(コンドル)」の名で呼ばれるようになり、やがて電話回線を不正操作するフリーキングにのめり込み、さらにコンピュータシステムへの侵入へと手を広げていった。


スーパーコンピュータセンター侵入という衝撃

捜査当局が決定的とみるのが、1994年12月下旬に発生したカリフォルニア大学サンディエゴ校のサンディエゴ・スーパーコンピュータ・センターへの不正侵入事件だ。

ミトニック容疑者は、TCP/IP通信の既知の脆弱性を突き、SYNフラッド攻撃やコネクションハイジャックを実行。
管理者権限に迫るレベルまで侵入し、.rhosts ファイルの改ざんにも及んだとされる。

この事件により、「国家レベル sees の研究機関でさえ安全ではない」という事実が明らかになり、米国内の研究者や企業に大きな不安が広がった。


追い詰めたのは一人の研究者

「もはや逮捕は不可能ではないか」
そう囁かれ始めた中、FBIは同センター勤務の計算機科学者・下村努氏の協力を得る。
高度な通信解析によってミトニック容疑者の居場所が特定され、今回の逮捕へとつながった。

この捜査手法は、今後のサイバー犯罪対策のモデルケースになると見られている。


インターネット時代の転換点

今回の事件は、単なる一人のハッカー逮捕にとどまらない意味を持つ。
急速に普及し始めたインターネットが、もはや「研究者や技術者だけのものではない」こと、そして同時に新たな犯罪の舞台となり得ることを世に示したからだ。

ミトニック容疑者は今後、最大で長期の禁固刑を受ける可能性がある。
だが彼の存在が突きつけた問い――
「ネットワーク社会における安全とは何か」
その答えは、まだ誰にも見えていない。

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